レジストレーションの2本柱②裏声の声帯閉鎖

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■発声訓練に重要な裏声の訓練には2つの大きな柱があります。 その内の一つ「裏声の閉鎖」について解説します。

実践発声学 レジストレーションの2本柱②裏声の閉鎖
この項目の解説動画
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この項目における学習内容
裏声の閉鎖とは
裏声の閉鎖訓練を始めるための条件
アンザッツ5
なぜレジストレーションに有効なのか
アンザッツ5における注意点
裏声の閉鎖訓練の2つの指針
アンザッツ5の純化
アンザッツ5の強化
この項目の到達目標 到達確認
裏声の閉鎖訓練をどの様に行うかがわかる
裏声の閉鎖訓練を行える条件がわかり、自分の状況と照らし合わせた判断ができる
裏声の閉鎖訓練の注意点がわかり、危険性を意識した訓練が実施できる
裏声の閉鎖訓練の効果がわかり、目的に応じた注意の仕方がわかる

◆裏声の閉鎖とは

 純粋な裏声 + 喉頭挙上による声帯閉鎖効果を加えた声

 裏声の純化、地声と閉鎖の分離という2つの重要な機能の訓練が可能

 発声能力向上訓練の中で、最も重要な訓練となる

 

◆裏声の閉鎖訓練を始めるための条件

 ある程度裏声の純化が進んでいる事が絶対条件となる。

 具体的には

 ・アンザッツ4での音域が2オクターブ以上

 ・アンザッツ4で2オクターブ間でのひっくり返り、声割れなど無し

 ・オーラルファルセットでB3~B4間でのひっくり返り、声割れなど無し

 

 以上は、裏声の閉鎖訓練に挑戦する目安となる。

 

◆アンザッツ5

 裏声の閉鎖訓練において使用する声種

 内喉頭:純粋な裏声の状態(声帯伸展 + 声帯粘膜波動 + 声帯閉鎖の3つの働きのみで構成)

 外喉頭:喉頭挙上(甲状舌骨筋による喉頭の挙上効果)

     この筋肉の活動で、嚥下機能の借用による声帯閉鎖促進効果が生まれる

 

◆なぜレジストレーションに有効なのか

 ・レジストレーションでの地声と裏声の狭間の強度を上げることができる

  →固着や混合の少ない声帯閉鎖ほど、発声への負荷なく声量が上げられるため

 

 ・固着や混合が強い場合 = 声帯閉鎖時に地声系の働きも同時に入ってしまう状態

  →声量を上げるほど発声への負荷となり、レジストレーションが不安定になる

 

 ・固着や混合が弱い場合 = 声帯閉鎖と地声系の働きが分離できている状態

  →声量を上げる際も声帯閉鎖のみ強めることができ、不要な負荷がかからない

   声帯閉鎖と地声系を別々にコントロールでき、無理な発声とならないためレジストレーションが安定する

 

◆アンザッツ5における注意点

 ・裏声の純化不足による地声化、過内転

  アンザッツ4やオーラルファルセットなどによる裏声の純化不足

  →裏声に不必要な働きが入ってしまう。これにより以下の様な現象が起こる。

   ・ 地声化 :内甲状披裂筋によるもの

   ・圧迫音声化:外甲状披裂筋、仮声帯筋などによるもの

 

 ・閉鎖と地声の混合による地声化、過内転

  閉鎖筋:外側輪状披裂筋、披裂間筋

  地声系:内甲状披裂筋、外甲状披裂筋、仮声帯筋など

  上記の働きが混合することで、閉鎖と共に地声化や圧迫音声化が生じてしまう。

 

 ・舌骨上筋群による喉頭挙上

  アンザッツ5における喉頭挙上は、本来甲状舌骨筋で行う。

  これに付随して舌骨上筋群が働くと、過内転による地声化や圧迫音声化が生じてしまう。

 

 以上3点が主に生じやすい裏声閉鎖訓練での失敗パターンとなる

 これらが生じることで以下のデメリットが生じる。

 ・声帯に強いダメージが生じる

 ・本来の目的と違う運動により、訓練効果が低下する

 ・不適切な運動の繰り返しにより、地声系の固着や混合が悪化してしまう

 

 よって、裏声の閉鎖訓練はある程度裏声の純化が進んでから行うのが望ましい。

 

◆裏声の閉鎖訓練の2つの指針

 アンザッツ5を用いた裏声の閉鎖訓練は、目的によって2つの方法を取る

 同じアンザッツ5の訓練でも、訓練趣旨により目標設定や注意点が異なる

 ・アンザッツ5の純化訓練 = 閉鎖と地声の分離訓練

 ・アンザッツ5の強化訓練 = 声帯閉鎖および声帯伸展の強化訓練

 

◆アンザッツ5の純化

 アンザッツ5を用いて裏声の純化をさらに進めていく

 強い声帯閉鎖をかけたまま上昇下降し、地声系が入らない様に維持することを第一優先に行う訓練

 主に地声系の混合や固着が残っている場合に効果的となる

 

◆アンザッツ5の強化

 アンザッツ5を用いて裏声の閉鎖を強化していく

 可能な限り強く閉鎖をかけたまま、音域の最上限/最下限を発声していき閉鎖と伸展を強化する訓練

 ある程度地声系の混合や固着がほどけた場合や、もう一歩混合をほどきたい場合に効果的

 最終的には裏声訓練の柱となる訓練で、最も重要な発声訓練の一つとなる。