男性【中村中さんの声を分析してほしい】

◆相談者様

中村中さんの声についての見解を聞きたい男性

◆質問相談内容

歌手の「中村中」さんの声が特殊に聴こえる

当スクールの見解が聞きたい

◆回答内容

遅くなってしまってすみません!数日バタバタしておりました!汗

中村中さんの声について解説します。長くなってしまいますが小分けにすると連投になってまずいと思うので、一気に送らせていただきますね!

ちなみにこのコメントは、youtubeの「友達の詩/中村中」のMVの1番を参考にお答えしています。

 

箇条書きにすると

・発声モードは地声が多め

・地声の強さは低音はやや弱めで構音はかなり弱い、音程による減衰が強い

・喉頭の位置は中庸~やや高い

・舌骨上筋群の緊張は弱め(ほぼ無し)

・声帯閉鎖は普通程度

こんな感じでしょうか!

 

一つずつ解説しますね!

 

・発声モードは地声が多め

発声モード=「地声で出そうとしてる」「裏声で出そうとしてる」どちらなのかという事をそう呼称しています。

声質自体はかなり裏声の音色が強めに聞こえますが、恐らく発声モードとしては地声が多い(=裏声のつもりで歌っている箇所は少なめ)かと思います。

意図的に裏声にしてるかも、という場所は

 

Bメロ最初「胸の痛み治さな」位まで

Bメロ後半「簡単にバレてし」位まで

サビ前半の「並んで歩くくらいでいい」

の所くらいかなと思います(実際には本人に聞かないとわからないので、声を聴いた予想になりますが)

 

・地声の強さは低音はやや弱めで構音はかなり弱い、音程による減衰が強い

地声の強さ=地声の響きを作る「内甲状披裂筋」の活動の強さの事。

これは低音部はそれなりに入っていますが、高音部はかなり弱くしか入っていません。

その為発声モードが地声でも(地声のつもりで出していても)裏声っぽい音色で聞こえるのではないかと思います。

 

また、本来なにも操作せず地声を出すと、音程上昇に伴って地声の強さは減衰していくのが自然な発声です。

これはいわゆる声区融合によって起こる現象で、高音になるほど地声を弱めることで裏声の割合を強めて負荷なく音程上昇させるのが楽な発声だからです。

 

大抵の歌手は、地声の強さをワザと維持して(あるいは無意識に内甲状披裂筋が固着してほどくことが出来ず)音程上昇に伴う地声の減衰をそんなに目立たせない事がほとんどです。

しかし中村中さんは上記の地声の減衰がかなり激しく見られます。

特に男性の喉を使って女性のキーを歌っている都合上かなり高音域での歌唱になっているため、地声の減衰が激しく現れて裏声がメインに聴こえるのだと思います。

 

・喉頭の位置は中庸~やや高い

いわゆる喉上げ、喉下げの話です。

話し声なども聞いてみないとこの方の通常話声の喉頭位置はわかりませんが、一般的な男性の話声の喉頭位置と比較すると中庸~やや高めの喉頭位置で歌っているように感じます。

ただし、日本人の一般女性の話声の喉頭位置と比較するとやや低めの位置のため、これは比較対象によって評価が分かれるかなと思います。

(生理的には男性の喉を使用しているため、一旦男性と比較した評価をしてみました。)

 

・舌骨上筋群の緊張は弱め(ほぼ無し)

喉頭の位置は上記の通りやや高めですが、この方の声は結構深めに聞こえますよね。

舌骨上筋群(顎の下の筋肉、二重顎になるゾーンを指で押し上げると触れます)の緊張があまりなさそうなので、喉頭位置に対して深めな音色になるのだと思います。

 

というのも、ザックリ「ハイラリ」「ローラリ」などで説明される喉頭位置ですが、実際には外喉頭筋は沢山の種類があり活動する筋肉によって微妙に声質が変化します。

特に舌骨上筋群が強く入ると、一般的に「細くてコミカルな声=志村けんさんのバカ殿的な声」になる傾向が強いです。

この方は「甲状舌骨筋」の働きによりやや喉頭位置は上がっているものの、他の外喉頭筋による喉頭位置の変化はあまり見られないため実質ほぼ中庸な位置で歌っている様な状態となります。

その為、ややハイラリ気味ではあるものの声質としては通常話声とほぼ同様の太さになっている、という感じかなと思います。

 

・声帯閉鎖は普通程度

声帯閉鎖の強さはおおむね標準程度かなと思います。

歌手は基本的に声帯閉鎖が強めな人が多いので、歌手の平均程度の閉鎖具合、という事ですね。

プロでない人はプロに比べると声帯が開き気味(厳密に言うと声帯閉鎖=声帯の開き具合ではないのですが、一旦イメージしやすくするために声帯閉鎖と言っています)な人が多いです。

その為一般の方と比較すると声帯閉鎖はかなり強いと思って良いと思います。

 

また、通常地声が強く入るほど閉鎖は強くなります。

これだけ裏声の響きが強い声質でしっかり閉鎖がかけられており安定もしているので、かなり喉の扱いが上手な方なのだなと感じます(プロなので当たり前ではあるのでしょうが)

 

 

以上、長くなりましたがザックリ中村中さんの発声についての僕なりの見解でした。

イメージしやすくするために「厳密には誤った言い方」を多用しているので、そのあたりが細かく知りたい場合はぜひご質問くださいね!

その後は雑談をして、やり取りは終了しました。