◆相談者様
一日しゃべった後だと裏声が掠れて声が出にくくなる20代男性
◆質問相談内容
仕事で一日電話対応しており、仕事後は裏声がカスカスする
話し声から改善する必要があるかと考えている
◆回答内容
情報ありがとうございます、順に整理させて頂きますので、色々と細かいところを教えて下さい!
・普段は裏声の最高音域がC5くらい
・普段力まずに出せる裏声の最高音はG4〜A4くらい(大体男性歌手の平均最高音くらい)
質問①
上記二点から、地声の音域はもう少し低いかなと思うのですが合っていますか?
また、大体で大丈夫なのでお仕事中の話し声の高さがどれくらいか教えて下さい!(阿部寛くらい、とかオリラジの藤森くはい、とかそんな感じで大丈夫です)
・お仕事で話された後は裏声の最高音がG4くらいに低下
・その際ひっくり返った様なカスカスした掠れ声になる
質問②
カスカスの裏声になるとの事ですが、喉や音が詰まる感じはありますか?
裏声は喉の詰まり(あえて大雑把な言葉で伝えています)によってもカスカスした音になります。
その掠れ声が脱力性のものなのか過緊張性のものなのか、相談者様の感覚で大丈夫ですので教えて下さい!
以上二点、細かい内容ですみませんがよろしくお願いします!
◆相談者様からの返答
回答① 話し声はA2〜C3程度
回答② 過緊張性な様に感じる
※相談者様はボイスサンプルをアップして下さいました。
◆回答
声と歌のサンプルまで載せていただきありがとうございます。
確かに裏声の全体的な掠れが目立ちますね、高音部でより顕著に出てくるのも確認出来ました。
裏声だけ聞くと声帯結節などの何かがありそうな声ですが、今まで耳鼻科などで声帯を診てもらった事はありますか?
もし何かしらの器質的なものだった場合は治療が先だと思うので、これからは器質的な何かが無い前提でお話をしますね。
・まずは出しやすい音程で大丈夫なので、可能な限り小さい裏声を出してみて下さい。
・その際、息漏れをさせて小さくするのではなく息漏れをなくして声量を下げて行きます(声は一旦詰まってしまっても大丈夫です)
・声が消えるギリギリまで小さくしていくのですが、何度かやっているといつもよりさらに小さく出来るタイミングが出てくると思います。
(普段は10の音量までしか小さく出来ないけど、時々8の音量まで小さく出来る、という感じ)
・この「さらに小さく出来た裏声」が、より純粋な裏声となります。
・裏声をより小さくして行って純化する事と、純化した裏声をそのまま広げて通常の声量に戻す事の2本柱で練習するのが良いかと思いますよ!
これまでが訓練法になります、もしご希望ならなぜこの練習を勧めたのかというメカニズム的なお話も出来るので、ご希望なら言ってください!
あとは喉の衛生について。
恐らくお仕事で喉は消耗するかと思います。
一般的には喉のケアとして
・水分(加湿も含む)
・代謝の促進
・睡眠
・栄養
この辺りが重要と言われています。
・水分についてはよく言う事ですが、喉の渇きを感じる前の水分補給と十分な加湿(最低でも50〜60%)が大切です。
人間は呼吸だけでも乾燥していきます、水分は摂取後30分以上は経過しないと吸収されないと言われているので、こまめに水分を取ってください。
・代謝の促進については体温や運動など、これもよく言うものですね。
それと、まだ可能性のレベルではあるのですが「セルラーメカノトランスダクション」という細胞の再生に関する理論があるそうです。
伸張刺激を声帯の細胞に与える事で代謝が促進される。と言う様な内容の理論なので、もし裏声を出して喉にダメージなどが無いようなら楽な弱い裏声(息漏れは可能な限り無くして下さい)を出すだけでも声帯の代謝が促進される可能性があります。
イメージとしては運動後に整理運動するような感じで考えると良いかと思います。
・睡眠
睡眠は当然しっかりとるべきです、最も声帯の回復を行うタイミングなので。
睡眠中は環境を整えるのが重要です。これは朝起きた時に喉がイガイガしない様な状態を作って頂ければ、あとはきちんと睡眠時間を確保すればまずは大丈夫です。
・栄養
2つの観点で栄養を考えます。
1.声帯の再生を促す
2.声帯の粘膜を保護する
1.については、主にビタミンが関係すると言われています。ビタミンA.B2.B6などは粘膜の再生に関係すると言われているので、意識的に摂るのが良いかと思います。
2.については「ムチン」という成分の摂取をおすすめしています。
植物性の多糖類の1つなのですが、これには水分を保持する効果があると言われています。
植物性のヌルヌルする食べ物(オクラ、なめこ、納豆、アロエなど)に多く含まれているので、意識的に摂るのが良いかと思います。
また、ビタミンやムチンは水溶性で熱に弱いものが多いです。
その為出来れば加熱しすぎないで食べられるもの、湯掻くよりはスープや汁物などで摂取する。
こう言った摂りかたの方が良いとされています。
以上、長くなってしまいましたが少しでも参考になればと思います!
◆相談者様からの返答
セルラーメカノトランスダクションについて、仕事後の消耗した喉でも行って良いのか
◆回答
この理論についてはまだ全く証明や認定がされていないものなので、一旦「妥当である」という前提の上での話になってしまいます。
その上で簡単にメカニズムをお話するので、その上で判断してもらうのが良いかと思います。
・まずはセルラーメカノトランスダクションの説明
1.声帯の内部、付け根部分にある「声帯横斑」という細胞の中に、今まで発見されていなかった粘膜代謝に関する細胞「声帯幹細胞」の存在が示唆された。
2.その細胞は引き延ばさせる事で活発になって、粘膜の代謝を促すとされている。
・次に声帯の引き伸ばし
1.人間の声は、声帯を息で振動させる事で振動音を作り、それを喉や口や鼻で響かせる事で増幅して出している、という仕組みです。
2.声帯は裏声発声時や高音発声時に「輪状甲状筋」「後輪状披裂筋」という二つの筋肉の働きで引き伸ばされます。
この働きで声帯がピンと張り(緊張度が増し)音程が高くなります。(ピンと張った輪ゴムを鳴らすと音が高くなるのと同じ)
3.裏声発声時はピンと声帯が張っているので声帯の粘膜表面しか振動せず、地声発声時は声帯の靭帯部分を緩める筋肉「内甲状披裂筋」が働くので靭帯部分と粘膜が振動します。(地声の方が動きが大きくなるという事です。)
4.通常の声帯振動時、地声は声帯同士がぶつかりますが裏声は(教科書上は)声帯同士の物理接触は起きません。
しかし、過緊張性の裏声の場合、声帯閉鎖が過剰にされている場合は声帯の物理接触がおき得ます。
その他にも、ソプラノ歌手のような響く裏声や安田大サーカスのクロちゃんの様な鋭い裏声は、声帯閉鎖がされているため物理接触をします。
前置きが長くなってしまいましたがここから相談者様の声について。
サンプルを聞く限り息漏れが多く声帯同士は離れているように聞こえました。
その為声帯に器質的な著変がなければあまり強い声帯の接触はなさそうです。
しかし結節などがある場合、それによって息漏れが出来ている為実際には強く声帯同士をくっつけている可能性が高いです。
また、これは経験則ですが音質的に器質的な何かがありそうな声質でした。
極論声帯同士がぶつからなければ声帯のダメージは生まれません(息漏れで声帯が乾いてもよくないのですが)ので、器質的な何かがなければ仕事終わりでもやって大丈夫かなと思います。
ただし、その場合でも出来るだけ息は弱く吐いて柔らかく弱い裏声を出すことが必須条件です。これは声のサンプルを出します。
以上、長くなりましたがセルラーメカノトランスダクションについて、ザックリした説明でしたが意見を書かせて頂きました!
ちょっと長くなっちゃいましたね、申し訳ないです!汗
文量の関係で最低限の情報しか書けていないので、なにか聞きたいことが有れば質問下さいね!
声については目に見えないので、正しい理解が一番大切だと考えていますので!
※その後、僕が裏声を数種類出したボイスサンプルを提示しました。
◆相談者様からの返答
現状閉じた裏声が出せず柔らかな弱い裏声しか出せないのだが、初期段階ではこれで大丈夫という理解で良いか?
◆回答
そうですね!3つ目のような裏声が出せる様なら、極論そこに当てる息を強めれば勝手に強くなっていきますからね。
まずは小さな声でもいいので、掠れない裏声を出すのが今は大事かと!
ちなみに、裏声は純粋であればある程「ボワーン」としたこもった響きになります。
僕の声のサンプルであれば、3つ目の弱々しい裏声を6回出していますが、2回目と6回目が一番純粋な形に近いです。音質の参考にしてみて下さい。
その後は雑談をして、やり取りは終了しました。
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