ボイストレーニングのコラム、お疲れさまでした。
まずは大まかな声の発達段階がイメージ出来ましたか?
次は、ボーカルトレーニングに関しての分類を見ていきましょう。
ボーカルトレーニングに関しては、ジャンルや楽曲によって様々な歌い方が考えられるため、基本的には「コントロールできるボーカルテクニックの種類を増やす」事を目標に訓練に取り組みます。
様々な表現方法をコントロール出来るようになることで、自分の理想の歌唱法を身につけましょう。
また、この次のコラムの最後に詳しく書きますがボーカルトレーニングの上達段階は
「認識→習得→使用→コントロール→無意識」
の5段階に分けて考えます。これから挙げていく要素のそれぞれに対して、自分がどの段階にいるのかを把握しながら訓練を行っていきましょう。
【ボーカルトレーニングの基本分類】
ボーカルトレーニングでは、歌唱法を主に4つの区分に分類して評価・訓練を行います。
その区分をそれぞれ【メロディ】【リズム】【調音】【装飾】と呼びます。
また、歌唱法によっては上記分類の複数にまたがるようなものが多くあります(例えば聴いている人にリズムを感じさせるためには発音やメロディコントロールなどをしますよね)が、そう言ったものはその対象となる歌唱法の本質がどこにあるのかという観点で分類を行っています。
それぞれの区分の各要素に関しては、次以降の「ボーカルトレーニング詳細分類」のコラムでまとめていきます。まずはそれぞれの区分の概要を押さえていきましょう。
・メロディとは
歌唱分類法におけるメロディとは、
1.ピッチ(音程の事)
2.声質コントロール
3.声量コントロール
と言った要素の集合を指します
1のピッチには音域なども含まれ、また2の声質には、単にきれいな発声を目指すという事だけでは無くその曲の中でどういった声をメインで使用していくかということも含まれます。
そのため歌を歌う上で最も大きなウエイトを占める歌唱区分ではないかと思います。
発声訓練で鍛える能力のうち、メロディに関わる要素が最も多いと考えて良いでしょう。
上の要素を見ると「良い声で正しい音程で抑揚つけて歌えばいいんでしょ」と言う人が多いです。
実際ザックリ言ってしまうとその通りなのですが
「良い声ってなに?」
「正しい音程かどうかちゃんと自己判断できてる?」
「抑揚って具体的にどうつけるの?」
など、細かく掘り下げると意外とよくわからなくなってしまう人が多いです。
その為この「メロディ」の区分は歌をある程度歌ってきた人ほど自己評価が甘くなり、自分の伸びしろに気づいていないということが多いイメージがあります。
・リズムとは
次にリズムですが、これは主に
1.テンポ
2.リズム表現
3.グルーヴ
と言った要素の集まりの事です。
リズムと一口に言っても
「音を出したり変化させたりするタイミング(=テンポ)」
「楽曲のリズムパターンに対する表現方法(=リズム表現)」
「正確なタイミングからあえてずらしたりすることにより生まれるいわゆる”ノリ”(=グルーヴ)」
など、様々な要素を含みます。
1のテンポ、2のリズム表現に関しては、恐らく中級者以降の人は「出来ている」と思ってしまいやすいものかと思います。
ですが、思っている以上に
「テンポ通りに歌う」
「平坦にならない様にリズムを大事に歌う」
など(あえて抽象的な書き方をしましたが)といった事は難しいものです。
自分の歌を録音して聞いたときに
「なんかごちゃごちゃ乱雑に聴こえる」
「プロの方が聴きやすい・明瞭に聴こえる」
「なんかノリが悪い気がする」
といった感想を抱くことがありますが、その場合このリズムの区分のうち比較的基本と言える1と2が甘いことが大きな要因の一つだったりします。
また、3のグルーヴに関しては一般的に言う「崩して歌う」こととは全く別物で、言われないと気づけないようなほんのわずかなタイミングのずれによって生じるものとなります。
グルーヴ感を出すためにはまず正確なテンポコントロールが必須となりますので、1と2の習得がある程度進んだ段階でチャレンジをするのがおすすめです。
・調音とは
調音(発音の事だと思って下さい、ここからはわかりやすく発音と書いていきます)の区分では
1.子音
2.母音
この二つの要素をコントロールする訓練を行います。
「発音をはっきりさせて聞き取りやすく」といったことも当然行いますが、それだけでは全く不十分です。
歌を習ったり練習したりする過程で「大きな口を開けてはっきりした言葉で歌おう」と練習をしたことがある人も多いかと思います。
しかしその練習でプロのようなカッコいい歌い方になった人はほとんどいないのではないでしょうか。
IPA(国際音声記号)と呼ばれるものを見ていただくとわかりますが、人間が出す事の出来る語にはさまざまな種類があります。
例えばJPOP歌手の歌を取り上げても、通常の日本語の発音と同じ発音方法のみで歌っている歌手はほとんどいないです。
それぞれの歌手で発音の偏りがあり、それがいわゆる「歌いグセ」や「抑揚」の大きな要因として出てきます。
その為「大きな口ではっきりした発音で歌う」ようなことをしてしまうと
「人間らしくない、のっぺりした、不自然な歌い方」になってしまうのです。
調音は、恐らく最も表現力に直結する歌唱区分だと思います。
・装飾とは
最後に装飾の歌唱区分です。ここでは各種歌唱テクニックを習得していきます。
有名なところでは
ビブラート
しゃくり
コブシ
などでしょうか。
その他にも本当に無数の歌唱テクニックがありますが、ここでは大きく
1.ピッチ変化のテクニック
2.声質変化のテクニック
に分けて習得を目指します。
1には上で例に出したビブラートやしゃくり、コブシなどが入ります。最もイメージしやすいテクニック群かと思います。
2にはシャウトなどのいわゆる特殊発声など、局所的に声質を変化させる表現法が入ります。
また、いわゆる強弱と呼ばれるもの(声量コントロール)のうち局所的に変化を起こすものに関してもこちらに分類されます。
以上がボーカルトレーニングの大まかな分類になります。一口に歌唱法と言っても沢山の要素がありますよね。
次のコラムで、ボーカルトレーニングの上達段階の説明をしていきたいと思います。
Saucer Of the Sound music school 代表 絢太(kenta)
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