20代男性【今後の訓練の指標】

◆相談者様

以前質問して下さり、喉に器質病変が疑われた20代男性

◆質問相談内容

喉を喉頭内視鏡で見て貰って問題なかった

裏声が掠れて上手く出せない、長時間話すと声が掠れる

◆回答内容

相談者様こんばんは!

問題なかったんですね!!良かった!!それならバッチリ訓練して大丈夫ですね!頑張って行きましょうね!

 

音のサンプルについても確認させて頂きました!ありがとうございます!

結論として、そのひっくり返って高く出ている時の裏声は通常より一段階純粋になった裏声です!

なので、そのひっくり返りの状態のままでどれだけ低音を出せるかを鍛えてみてほしいです!

 

さっきの「一段階純粋になってる」というのはイメージつきにくいかもしれないので、もしわかりにくかったらぜひ質問下さいね!

 

◆相談者様からの返答

地道にやってみますとの事

ひっくり返った裏声が純粋なものだというイメージが湧きにくい

喉の調子が悪い時に勝手に出てくるだけ

 

◆回答

きっと時間はかかってしまうかと思いますが、じっくりやっていきましょうね!

 

あの感じが純粋な形だというのはイメージつきにくいですよね!詳しく説明させて下さい!

 

まずは

純粋=地声の働きが取れた声、という意味で使っています。

 

地声の筋肉が強く入った状態は裏声にとって負担になります。詰まったり音程が上がらなかったり綺麗にならなかったり。

そして喉の疲れは声全体のパフォーマンスを低下させます。普段10の力で出せる声も、疲れていると15くらい力が必要になりますよね。

 

なので、喉が極端に疲れている時の裏声は

「掠れたり詰まったりしてうまく声にならない」

「普段入ってる地声の筋肉を無理やり解いて負担を無くして出す」

このどちらかのパターンになる事が多いです。

スポーツ漫画の特訓シーンなんかでよくある「厳しい特訓でクタクタになりすぎて無駄な力が勝手に抜けて、謎に良いフォームで動作が出来てレベルアップする」みたいなイメージで考えて大丈夫です!

 

今はまだ狙って出せないはずなので、これを狙って出せるようにするための訓練が裏声の純化訓練になります。

少しずついろんな訓練法をお伝えしていくので、ぜひ取り組んでみて下さい!

 

 

色々と説明したい事があるのですが、一旦僕が思うこれからの相談者様に必要な発声訓練をお伝えさせて頂きますね!

主に4本柱で進めていくといいと思います!

 

①裏声の純化

②純粋な裏声の閉鎖

③地声の強化

④地声と裏声の再融合

 

それぞれ解説して行きます!

 

①裏声の純化

 

これは既に説明済みですね!

より綺麗な裏声を出す為に、綺麗な裏声(さっきのひっくり返った裏声も、通常よりは一段階綺麗です)を低音まで下降させる。

慣れてきたら綺麗になった裏声をそのまま小さな声にしていってロングトーンをする。これによって息漏れを無くして掠れを取って行きます。

 

因みに細かい筋肉の働きは割愛しますが、掠れをなくす為に必要な声帯閉鎖筋は主に2種類あって、その内の1つしか使えていない状態となっています。

息漏れをさせないように気をつけながらどんどん声を小さくして行くと、恐らく途中で息だけしか出なくなる部分があるはずです。

何度もチャレンジして普段より小さな声に出来るタイミングが時々出てくるはずなので、その時の感覚を掴んで下さい!きっと普段とちょっと違う喉の感じがあるかと思います!それが今使えていない筋肉だと思って良いかと思います!

 

②純粋な裏声の閉鎖

 

①でも少し触れた「息漏れをなくす」訓練です。

声帯閉鎖がしっかり働くほど、息漏れがなくなって長く声が伸ばせるようになり、声の響きが増します。

 

ロングトーンである程度息漏れがなくせたら、今度は出来る限り細い裏声を出しましょう。

 

イメージとしては

「安田大サーカスのクロちゃん」

「小梅太夫のチャンチャカちゃんちゃんの声」

の感じです!

※例に挙げた人はかなり地声の筋肉も強く働いている=純粋な裏声ではないです。

実際にはあれくらい細い状態で純粋な裏声を出す訓練だと思って下さい。あのまま真似したら喉を痛めるはずですので注意!!!!

 

喉仏を上げる「甲状舌骨筋」という筋肉を働かせることで、より声帯閉鎖を促進してくれます。

この時に、できれば舌骨上筋群(顎と喉の間にある筋肉群、二重顎になる部分を口内に向かって真上に押すと触れます)の働きは可能な限り抑えたいです。

この訓練をする場合「甲状舌骨筋」「舌骨上筋群」の位置はぜひ画像検索か何かで見て頂いてからやってみて下さい!

 

それと注意点として、純化が進んでいない人がこの細い裏声をやると喉への負担がとても大きいです。

その為、この②に手を出すのはかなり先の段階だと考えていいと思います。

(普段のレッスンでは①と②は同時進行でやっていくのですが、一緒に声を見ていけない都合上同時進行では危険だと思うので、まずはたくさん①をやって下さい)

 

③地声の強化

今までは「地声の筋肉を抜く」訓練でした。今度は地声の筋肉を強く入れる訓練です。

といってもこれは裏声以上にイメージがつきにくいので、簡単なものを1つだけ紹介します。

 

地声を出来るだけ低音まで下げる訓練です。

その中で大体の人は

「エッジボイスになる」「息漏れが激しくなって声にならない」

このどちらかになります。

 

まず第一段階としては

・地声を下げていくと徐々にエッジボイスに変わっていく

この状態を作ります。

下降時に息漏れしないように、裏声のロングトーンと同じ感覚で息漏れをカットしていきましょう。

 

第二段階(こっちが本番)は

・徐々にエッジボイスになっていくが、出来る限り低音までエッジボイスにならず素の声のまま下がれるか鍛える

 

音程下降の筋肉は主に「エッジボイスにするやつ」「地声にするやつ」の2つです。

エッジボイスにならないまま音程下降することで、結果的に「地声にするやつ」の働きを鍛える事ができます。

 

①②と③でそれぞれ、地声と裏声をより純粋な形にして強化しました。これを地声と裏声の分離訓練と呼びます。(名前は覚えなくて大丈夫ですからね)

 

相談者様は現在「地声と裏声の混合状態」にあります。

裏声を出そうとしても地声の筋肉が抜け切らないし、地声にしようとしても裏声っぽさが残る状態です。

そのため地声と裏声をしっかり分離する事でそれぞれの働きを個別で鍛えて、喉を自由にコントロールする能力をつけてもらう訓練です。

喉のダメージを軽減する方法は、主に「混合をほどく」「外喉頭の筋肉を鍛える」「声帯閉鎖を鍛える」このあたりになります。

 

①〜③で一通り網羅できるはずなので、ぜひチャレンジしてみて下さい!

 

④地声と裏声の再融合

①〜③で分離して強化した地声と裏声を改めて融合していきます。

このステップを踏まないと、声同士がバラバラになってしまって歌いにくくなったりしてしまうからです。

 

この訓練が、他の相談者様にも紹介させて頂いた「レジストレーション」という訓練になります。

解説は先程書いた通り

 

内容は「地声と裏声を境目なく繋げる」訓練。

 

ポイントは

・出来る限り綺麗な裏声から始める

・出来るだけ太く強い地声にする

・最初と同じくらい綺麗な裏声に戻る

・その行き来の中で、少しも声がブレたりしないようにゆっくり丁寧に行う

 

こんな感じですね!

あとは僕も動画を上げているので、ぜひ見てみて下さい!

 

以上となります!

いつも通り細かくて申し訳ないですが(笑)なにか気になる事があったらいつでも聞いて下さいね!

 

◆相談者様からの返答

裏声の閉鎖という感覚が分からない

裏声の閉鎖時や音程上昇時は喉頭上昇しない方が良い?

 

◆回答

おはようございます!

 

そうですね、発声訓練に関しては今の段階では正直時間のかかる方法論しか確立されていないと思うので、焦らずゆっくりやっていきましょう!

僕ももっといっぱい勉強して、裏技みたいな方法を開発出来る様に頑張りますね!笑

 

裏声自体が出ないことの多い人は、声帯の粘膜が動かなくなっている人です。

 

原因として

①粘膜そのものが乾燥や肥厚で器質的に動きにくい

②粘膜を動く状態にする働きが弱かったりコントロール出来ていなかったりする

このどちらかです。

 

①に関しては器質的疾患がある場合に気にすべき内容なので、日頃のケア以外は考えなくて大丈夫です。(これが理由で声帯を調べて欲しかった感じです)

 

恐らく②が原因ですが、声を聞いていると「声帯閉鎖」と「地声系の働き」と「粘膜を動く状態にする働き」の3つが混合している様に思えます。

なので裏声を出す(=粘膜を動かす)為に、過剰閉鎖やガラガラ声の働きも一緒に使わないといけない状態になっている。という事ですね。

 

混合状態に対する対策はオーラルファルセットが適切だと思います。

裏声を出しながら声帯閉鎖や地声系の働きを解く事で、上記3つの働きを分離する効果があります。

 

ただ、それだけだと時間がかかるので同時にロングトーン訓練をするのが良いです。

ロングトーンは

・分離がキチンとできている事

・閉鎖がキチンとかかっている事

この二点が絶対条件となります。

また、他の訓練と違い

「何秒声を伸ばせるか」

という明確な数値で結果が出るのもわかりやすいですよね。

 

オーラルファルセットとロングトーンで分離を進めつつロングトーンで閉鎖も鍛えていく、と言うのが今は大切だと思います!

 

閉鎖については喉の高さは今のところあまり気にしないで大丈夫です!

ピッチについては、オーラルファルセットとロングトーンの段階ではあまり上がらない方がいいと思います!

ただ、細い裏声の段階に入ったらガンガン上げていきます!なので今の時点ではあまり上がらない方が良い、という事です!

その後は相談者様がご自身の言葉で内容をまとめて下さった後に雑談をして、やり取りは終了しました。