20代男性【腹式呼吸や声のコントロールについて】

◆相談者様

腹式呼吸のしくみについて知りたい20代男性

◆質問相談内容

今習っているボイストレーナーに

「腹式呼吸=息を吐くからお腹がへこむのではなく、お腹がへこむから息が出るのだ」と指導された。

仕組みなどについて知りたい。

 

◆回答内容

こんばんは、当方音声医学に関わる者です。

歌で一般的に言う腹式呼吸について言うなら、確かに「お腹が凹むから息が出る」で概ね合っていますよ。

 

正確に言うと

①息を吸ったときに横隔膜が下がってお腹が膨らむ

②通常の呼気(息を吐く事)は、膨らんだ肺が元に戻ろうとする弾性力で行われる

③歌で一般的に言われている腹式呼吸は、息を吸った時に膨らんだ肺とお腹をそれぞれ

・肋間筋

・腹筋群

を使ってわざと縮ませるから、強く息が出る。

 

文字だと上手く伝わるか不安ですが、仕組みとしてはこんな感じでしょうか。

ちなみに、歌唱においてあまり強く息を吐きすぎるのは細かな声のコントロールが出来なくなるというデメリットがあるため、腹式呼吸と言われている発声法には注意が必要になります。

 

◆相談者様からの返答

張りのある声には腹式は役立つが、細かなコントロールには適さないという事?

 

◆回答

腹筋を使った発声は一旦声の張りは増しますが、実は腹筋を使わなくても張りのある声は出せますよ!

発声の基本は声帯運動なので、呼吸法はあまり気にせず声帯のトレーニングをするのが良いと思いますよ!

まだまだ一般的には腹式呼吸とか鼻腔共鳴とかはよく言われていますからね、知らなくても無理はないと思います!

 

相談者様のトレーニングの目的や声の現状によって、訓練内容は大きく変わってきます。

相談者様はトレーニングをしてどんな風になりたいですか?

例えば声量を上げたいとかハイトーンを出したいとか、そういう目標みたいな物をお聞かせ下さい!

 

◆相談者様からの返答

・声量、ハイトーン、シャウトなど欲しいが、まずは裏声がしっかり出せる様になりたい

・歌が上手い人はどんな感覚で声を出しているのかも知りたい(どんな声でも話し声と変わらない感覚で出しているのか、など)

 

◆回答

なるほど!

それでしたら裏声について、相談者様の現状をいくつかパターンで想定してお答えしてみますね!

 

①歌っている時に裏声が出せない場合

→この場合、多くは「地声や声帯閉鎖」と「裏声」の分離が出来ていない場合がほとんどです。

まずは出しやすい高さの裏声を出来る限りの綺麗さで(ソプラノ歌手のようなイメージ)出します。言葉は「ウ」が良いです。

そのまま声質が変わらないように気をつけながら「ドシラソファミレドー」と1オクターブ下げて行って下さい。

 

注意点としては

・音程を下げる時は、出来るだけなだらかにならないように「カクカク」下げましょう。

・音を下げる時に声のひっくり返りや声割れなどが起きないようにしましょう。

これは裏声の純化と呼ばれる訓練法で、裏声に入っている無意識の力みをとる訓練です。

 

あとは

・ヨーデル(またはそれに近いジャンルの曲)を練習する

・持ち歌を全部裏声で歌う

これだけでも近い効果が得られます。お手軽にやりたい場合はオススメです。

 

②歌っている時に裏声は出せるけど、掠れたり潰れたりして綺麗に出ない

この場合は上記の「裏声の純化訓練」のほかに「声帯閉鎖の働きと地声系の働きの分離」の訓練も必要になります。

安田大サーカスの「クロちゃん」の声をもっとキンキンさせた様な、細く鋭い裏声(喉仏が上がったキンキンする裏声)を出す訓練をしましょう。

正しく出来れば「声帯閉鎖の強化された裏声」が出せる様になり、強い声を出しても喉が詰まりにくくなります。

 

ただし、これは上記①がキチンと出来ていないと非常に喉を痛めやすい発声法です。

少しでも喉の痛み・痒み・いがらっぽさがあったり、すぐ声が掠れたり、翌日の朝声が調子悪くなったりする場合は即刻中止をして下さい。

とても難しい訓練法なので、まずはひたすら①の訓練だけでも良いかもしれません。(自分の生徒様なら直接指導出来るのですが、この場だとこれが限界です。ゴメンなさい)

裏声を強く出そうとしたり強い地声から強い裏声に変換したりする時に裏声が潰れてしまう人は、強い声を出そうとする時に無意識に地声にする働き等が入ってしまうケースが多いです。

なので「裏声+声帯閉鎖」の声を鍛える事で「地声系の働きと声帯閉鎖の働きの分離」が出来る様になります。

 

まずは2パターンについてお答えしてみました。

凄くゲンナリするような文量になってしまい申し訳ないですが、発声訓練は正しく行わなくてはただ喉を痛めるだけで終わる事も多い為、細かめな説明をさせて頂きました。

 

次に発声の感覚について。

上手な度合いにもよりますが、少なくとも喉の訓練をすれば今しんどく感じる声をなんとも思わず出す事は出来る様になりますよ。

喉の訓練は、イメージとしては筋トレの様なものです(実際には筋力のトレーニングではないのですが、イメージとしてはそんな感じ)

普段運動しない人がロナウジーニョと同じスーパープレイをしようとしても出来ないでしょうし、万が一出来たとしても凄くしんどいはずですよね。

トレーニングによって声を出すための身体能力的なものが向上するので、自ずとどんどん発声は楽になっていきます。

ただし、どんな声でも同じ感覚や楽さで出るかと言うとそう言うわけではないです。

やはり音程や声量によって声の努力性(どれくらい頑張ってるかということ)は変わってくるので「全体的に楽になるんだなあ」と思って頂くのが一番近い理解かと思います。

もしももっと細かい理論を聞きたい方がいればお答えするので、質問ください。

 

◆相談者様からの返答

裏声の純化は息漏れが多いのか?ソプラノ歌手は息漏れが無い様に聞こえるが…

 

◆回答

理想を言うと息漏れのない裏声で出すのが理想です。

ただ、息漏れをなくそうとして喉が詰まって汚い裏声になるくらいなら、初期では多少息漏れがあっても気にしないで大丈夫です。

 

また、裏声の純化訓練で使う声として「オーラルファルセット」と呼ばれる声があります。

これは可能な限り息漏れをさせて大量に息を吐きながら出す裏声なのですが、この声が理論上その人の出せる最も力みの解けた裏声である事が多いです。

もしよければ調べてみて下さい。

その後は雑談をして、やり取りは終了しました。